45年目のありがとう

子どものころ、Ryuちゃんという、お父さんが漫画家の幼馴染みがいた。
家が隣同士だった。

同じ幼稚園で、彼にはかばってもらったことがある。
休み時間、遊び場から帰って手を洗おうとすると、お皿に赤、黒、黄色のべとべとしたものがついたまま放置されていた。私は、習性からか、全てのお皿をきれいに洗って伏せておいた。

すると、先生が「誰ですか!絵具を流しちゃったのは!これじゃ絵が描けないでしょ!」と、すごい剣幕で叫び出した。
そう、あのべとべとしたものは絵具だったのだ。絵具としらない私は、きたないお皿を綺麗にして、良いことをしたと思っていたのに、先生の剣幕を目の当たりにして、自分がしたとはいえなくなってしまった。

そしていつも泣き虫の私は、ブルブル震えていたのだと思う。
涙目になったのは覚えている。

斜め前に座っていたRyuちゃんが「◎◎ちゃん、◎◎ちゃんがやったの?」・・うなづく・・「大丈夫だよ。一緒に手をあげよう。絵具だって知らなかったんだよね?」・・うなづくが手を上げられずにうつむいて泣いていた・・ということで「せんせえー、◎◎ちゃんが、絵具って知らないで洗っちゃったんだって。」と言ってくれた。Ryuちゃんは私の救世主であった。

また早起きの私は、学校へ行くのも早く、誰もいない教室に一番ノリをするのが常だった。
しかし忘れ物も多く、私の母は、遅刻がちの龍ちゃんが登校する時に、よく私の忘れ物を彼に渡して持ってきてもらったりした。

ピアノが好きで、お互いの家からピアノの音が聞こえると、競ってピアノを弾いていた。
習い始めたのは私の方がはるかに早かった(4歳ごろ)のに、小学2年生から始めた彼は、ぐんぐん私を追い抜いていき、なんとなく私が追いつかれた!と思ってしょげて練習をしないでいると、時折「このごろ練習していないね。◎ちゃんがしないと張り合いがないな」と声をかけてくれた。

私が引っ越する朝、ピンポーンとチャイムがなった。
ドアを開けるとRyuちゃんが立っていた。
「これ・・」と言って、手紙をくれた。
私は心の中でひそかに思い続けていた人がいた。
いつもいつもRyuちゃんから助けられていた私は、その人からの手紙を彼が届けてくれたのかと思った。

開けてみると、Ryuちゃんが育った湘南の水面が、太陽の光でキラキラと光っている写真が貼ってあった。
初めてもらったラブレターだった。
今でも大事にもっている。

去る前に、彼の家に行き、「ありがとう。ごめんね、でも・・・」というと、それ以上言わなくていいからと言われた。なぜか彼は私の思いを知っていた。

大学時代に同窓会があった。
ミュージシャンとして活躍しているという。
バックミュージシャンとしての彼をテレビで何回か顔を見た。

最近、Ryuちゃんと連絡がついた。
メールで「幼稚園のころにかばってくれてありがとう・・」とお礼を言った。
約45年ぶりのお礼であった。

彼のお父さんの描く漫画は動物がメインだった。
「行ってはいけない!」と言われていたのだが、ついつい面白くて、Ryuちゃんと彼の妹と仕事場に乱入しては邪魔をしてしまった。そこには、ジローさんというアシスタントがいたが、彼が谷口ジローさんであることを最近知った。

お父さんの漫画、復刊していた。
無慈悲な日本の世の中で、一番大切な宝、子どもたちに野生力(りき)と想像して生きろと・・とメッセージつきだった。

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Ryuちゃんは、この少年以上のロン毛だった。お父さんの漫画を一番楽しみにしているファンだった。
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by lakeforest | 2010-04-02 00:44 | 雑感

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