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或る冬の日

とけかけのアイスキャンディ
雪が降った日の朝、不思議とためらうことなく
「これ私が作ったおにぎりなんですけれど・・おじさん、よかったら食べて?寒いから気をつけて」と
お昼に食べようと思ったおにぎりとバナナを・・段ボールを地下鉄の出口から外へ運ぶおじさんの手に渡すことができた。

6年ほど前に近所の公園で凍死した人がいる。
夏の蝉がミンミンと叫ぶ中、幼稚園の子どもにアイスキャンディを買ってくれたおじさんだった。
「おじちゃんの手はきたないけど、アイスは買ってきたばかりだからきれいだから」と、はにかみながら少しとけかかったアイスを差し出してくれた。
遊んでいた園児の数だけとなりの商店から買ってきてくれた。
ママたちは少し躊躇しながらも「ありがとうございます」と言って受け取り、子どもたちに「ありがとうは?」と促し「いただきましょう」と言ってアイスキャンディを頂いた。
子どもたちは「おいしいね!」「うんおいしいね」といって頬張った。
暫くして「これよかったら・・」とおせんべいをお返しに渡した。
公園のあずまやを自分の部屋のように使っていたおじさんだった。

卒園式を控えたある冬の日、お昼頃に公園へ行った。
すると、知らないおじさんが「あそこに住んでたおっちゃんね。今朝死んだって。いい人だったのにな。心臓麻痺だって」と。
寒い寒い日だった。

白い吐息で思い出す。
とけかけのアイスキャンディとおじさんの笑顔。


不必要な私
「あなたは、もういらない」と言われたことがある。
突然上司に、密室で二人きりで。
それ以来、私は密室を嫌い避けている。

昔の話である。
過去のことでも、その心の痛みは癒えることはない。
年度末が近づくと、その言葉が思い出され、とても苦しくなる。
ゆえに2月は気落ち月間である。

今、人権福祉を扱っている人間として、この経験はとても大きなものとなった。
以前、同僚が言っていたことがある。
人権問題に触れ、勉強すればするほど、知識が増え、頭でっかちになり、本当に大切なことを見失いそうになる・・と。

to do≦to beであること。
当事者と同じ目線・・・。
心からの感謝の気持ち。

不必要な私だからこそ、必要なことを得られたのだと思っている。
by lakeforest | 2010-02-09 20:32 | 雑感

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